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株式会社ePARA、初めてがいっぱいの新入社員研修

ePARAでは、今年(2023年)の4月3日と4月7日の2日間、新入社員研修が行われました。
今回は、その新入社員研修の様子を、研修を受けた私、全盲の新卒新入社員こと実里がレポートいたします。

実里のアイコン。右手を頬に添え、左手に白杖を持っている
実里

新入社員研修開催までの流れ

ePARAはこれまで中途採用を中心としており、社会人経験が豊富な社員が集まっていたため、新入社員研修が組まれたことはありませんでした。また、私が視覚障害による全盲であることもあって、「新入社員研修をどこにお願いするのか」や「カリキュラムの内容」について社内で話し合いが行われたと聞いています。

また、通常の企業の研修は受講者が複数人いるものですが、今回研修を受けるのは私1人。全盲かつ1人に向けた研修をお願いするということで、依頼を受けてくださる会社を探すことに苦労したそうです。

そんな中でこの研修を担当してくださったのが、株式会社エミー様でした。株式会社エミーは、実行力のある人材を育成することを掲げる人材教育会社であり、オーダーメイドで研修を提供していることが特徴的です。

ePARAの新入社員研修を行っていただきたい旨をご相談したところ、「全盲の方向けの新人社員研修についてはまだ経験がないため、一緒にカリキュラムを作成していくような形でお受けいたします」という、大変ありがたく前向きなお返事をいただきました。そのおかげで、ePARA初の新入社員研修が実現することになったのです。

全盲新入社員研修の内容

今回の研修は、4月3日と7日の2日に分けて1日90分で実施され、Zoomを用いたオンライン形式で、株式会社エミー代表の渡辺さんと私の1対1での開催となりました。

<1日目:まずは基本が大切>

何をするにも、まずは基本から。ということで、研修1日目は「社会人としての心構え」と「丁寧な言葉遣い」について講習を受けました。

1日目の研修の中で、私が特に印象深かったのは「5W4H」について教えていただいたことです。上司からの業務の指示をメモするとき、自身が他の社員に業務連絡を行うときなどに

What→何を(目的・目標)

When→いつ(期限・日時)

Where→どこで・どこへ(場所・行き先)

Who→誰が・誰と(人・会社)

Why→なぜやるのか・やらないといけないのか(理由)

How→どのように(方法・手段)

How much→いくら(コスト)

How many→いくつ(数量)

How long→どれくらい(期間)

を意識することで、業務全体を漏れなく把握することができます。「何をいつどこで誰がどのように(4W1H)」は以前から知っていましたが、ビジネスシーンではより詳細に分けられていることを初めて知りました。

また、「問題意識を持つほど仕事は面白くなる」という言葉もとても印象に残っています。勤めている会社についての知識を深めたり、自身の業務が何のためのものなのかを理解して働いたり、主体性を持つことによって仕事を楽しむという姿勢を忘れない社会人でありたいと思わせてくれる言葉です。せっかく働くなら、業務に楽しさを見いだしたいですよね。

講師の渡辺様。横に何も書かれていないホワイトボードが置かれている
講師を引き受けてくださった株式会社エミーの渡辺様。
資料を事前に共有していただき、当日オンラインでレクチャーしていただきました。

<2日目:実践的なスキルを学ぼう>

2日目は、私が行っていく業務内容に合わせた実践的なスキルの研修が行われました。会話スキルや議事録のとり方、ビジネスメールの書き方など、私の業務内容を確認しながら必要なスキルをお教えいただくという、1対1ならではの研修となりました。

その中でも、オンライン会議のファシリテーターの練習は、かなり緊張しました。参加者の把握や全体の進行、限られた時間の中で全てのアジェンダを行うためのペース配分など、気を配るべきことが多いと実感しました。今はまだ、練習の時点で脳内プチパニックを起こしてしまうレベルですが、いつでも安心してファシリテーターを任せてもらえるように場数を踏んで成長していきたいです。

まとめ

ここまで、私の新入社員研修レポートをお届けしてきましたが、お読みになったみなさんはどのように感じられたでしょうか? 全盲だからといって、特別なことはない、ある程度普通の研修レポートだと思われた方も多いのではないでしょうか。

今回、研修を担当してくださったエミーさんにとっても、全盲の人を対象とした研修は初めてだったということで、カリキュラムは一般的なものでオンライン形式でも実施可能なものをチョイスしていただきました。

特別なことといえば、オンライン形式で1対1であることと、研修資料は当日使うPowerPointのデータを事前に共有していただいてポートフォリオ代わりにしたことの2点くらいでした。

障害がある人にとっても、障害を持つ人と関わる人にとっても、初めての場面では手探りなことだらけです。それは仕事の場面でも同じで、今回の私の新入社員研修についても、ePARAもエミーさんも私自身も何が正解か分かっている人はいませんでした。

「分からないからできない」ではなく、「分からないから、分かるために挑戦してみよう」と行動することで、新しいものを得ることができるのだと思います。私も、今回の研修を受ける前に「どんな内容の研修がいい?」と聞かれてもピンとこなかったのですが、研修を終えた今は「やっぱり基本を教えていただくのは大切だな」と実感すると同時に、「次に研修を受けさせていただける機会があれば、ビジネスシーンに沿った身だしなみと立ち居振る舞いについても学びたいな」と思い至ることができます。視覚障害があると、周りの先輩から見て学ぶことが難しいので、外面的なビジネスマナーを一度しっかり教えていただくことは重要な経験になりますよね。

最後に、このレポートを書いている今、入社から約2か月が経った私がこの研修から進歩したと思えるところを記して、締めといたします。

この2か月で進歩したところといえば、業務について理解を深めていく姿勢自分で考える癖がついてきた点です。研修の中で教えていただいた「問題意識を持つほど仕事は面白くなる」の精神のもと、割り当てられた業務に対して指示されたことをこなすだけでなく「どうすれば効率が良くなるか」「どうすれば周りの人が動きやすくなるか」を考えながら業務にあたるようにしています。今もまだ、仕事に慣れたり覚えたりすることに精一杯なところがあり、つい受動的になってしまうこともありますが、それでも業務に向き合い考える癖はしっかりついてきたと実感しています。

次の目標は、考えた結果を業務に結びつけることですね。

これからも、株式会社ePARAと実里の応援、どうぞよろしくお願いいたします!

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実里

中途失明。ePARA社員兼ePARA Voice所属タレント(盛永実里)として活動中。
好奇心の強さは人並み以上で、やりたいゲームもたくさんあります。
Twitter: @misato3310eg

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